お母さんたちの集まり meeting of mothers

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お母さんたちの集まり
どうしたらわが子を小児マヒから防ぐことができるか。このことは集団発生時におけるお母さんたちの重大関心事だった。いわゆる井戸端会議も小児マヒの話題にかわったことも事実だ。そしてまた市の理事者もどうしたら衛生教育が徹底するか頭の痛いところだった。やはりお母さんたちに直接に話すことがなにより効果があるとみたようだ。いままで兎角面白くもない衛生教育は、その方法のいかんにかかわりなく毛嫌いされていた。こんどのお母さんの集まりは街角、保育所、お風呂屋、児童公園、遊園地、小学校、集会所など、それがきまって夕暮れどきだった。そしてこの会は「たそがれ教室」と呼ばれ市内25カ所3800人のお母さんが出席した。保健婦の話をきくお母さんたちの顔は真剣そのもので予定の時間をはるかにオーバーした。小児マヒは小さなこどもが対象だけに集った人も若いお母さんが多いが、なかには孫のめに出席したおばあちゃんが熱心に筆記する姿、出産も間近い大きなおなかをした奥さんの不安げな表情、小児マヒの流行さなかに生まれてくるこどもを思うとき母となるこのひとが不安になるのも当然だろう。