韓国家庭委託保護事業の現状と課題

The Present Condition and Future Tasks of the Foster Care Activities in Korea

 

国立ソウル大学 チョウ・フンシク教授(博士)

(Cho, Heung-Seek, Ph.D; Professor, Seoul National University)

朝興式(Cho, Heung-Seek, Ph.D; Professor, Seoul National University)

Dr. Heung-Seek Cho, Prof. of Seoul National University

 

 リストに Back to list

 

1.序文

 

韓国は急速な産業化と近代化を経験しながら高度経済成長をしてきた。 1997年末の外国為替危機による経済的困難も経験したが、3年以内に IMFの指導から抜け出した。最近の所得向上という現象と共に、低出産・高齢化という社会問題に直面してきている。また,家族の分化と核家族化現象、離婚率増加、夫婦間の不仲と家庭内暴力、家族共同体精神の低下、生活についての関心の個別化などが急増することによって、家族解体が進んでいる。このような家族解体は、すなわち、社会的保護を必要とする児童の数を年毎増加させ、一般児童に対する社会福祉政策と共に、保護児童に対する社会福祉政策の重要性が、よりいっそう叫ばれるようになってきている。

 

児童は、成長の過程で、一人で生きていくことが難しい存在なので、独立して生きていける成人になるまでは、家庭や公的支援が必要なことは当然である。特に家庭は、成長の最中の児童の性格形成に決定的な役割を果たすので、児童の年齢が低いほど、児童にとって他の条件にある場合よりも重要である。

 

一般的に、施設保護より発展したモデルとして、家庭委託保護事業が行われているが、実際に国連児童権利条約は保護児童の効率的保護のために活用できる主な代理保護の形態として、家庭委託保護事業を積極的に推奨している。

このような家庭委託保護事業は、社会でやむをえず発生した要保護児童を、国内の健全家庭に委託代理養育し、家族の雰囲気の中で情緒を育て、健全な人格を形成することで、児童を健全に成長させることを目的としている。

 

我が国の家庭委託保護事業は、古代からその記録を見いだすことが出来る。三国史記によると 1500年前から、片親、孤児、子どもがいない高齢者などが、要保護者として指定され、食事が支給された。

児童の家庭委託保護に関して、以後社会や民家で粘り強く育ててきたが、法律を制定して施行したのは、粛宗 22(1696)の修養臨時司牧(一時的保護、里子養育)や、貞操 7(1783)に編纂した字恤典則を通して、浮浪児を国家が受け入れ、保護したり、民家で育てたりした。場合によっては、両者女または奴婢(下男、下女?)とみなすことを許可した。

 

しかし国の社会福祉政策の一環として意味を持つ韓国の家庭委託保護事業は、児童福利法が制定された 1961年以後からだと言う事ができる。1981年児童福利法が児童福祉法に改正されて以降、1990925日に国連児童権利条約に加入した我が国政府は、児童の権利の増進と国の保護が必要な児童の保護措置、そして施設保護の問題点と家庭委託保護の活性化のための勧告に従うよう努力した。

1990年に家庭委託事業モデル事業を実施し、1999年保健福祉部は、主要業務推進計画を初めとして、2000121日に改正された児童福祉法により、養子縁組を前提とした一部児童のための中間措置としてではなく、欠損家庭や貧困家庭の児童を保護するための家庭委託保護において、本来の意義を生かす方向に転換し推進した。

 

2000年に家庭委託養育補助金を支援し始め、2000年から 2002年まで江原道に家庭委託支援センターを設立してモデル運営し、2003年から 2005年までの間に、地域家庭委託支援センターを全国に拡大(17ケ所)し設立した。ソウル、仁川、廣州、競技、江原、忠北、忠南、全羅北道、全南、慶南の 10地域には韓国福祉財団、京畿北部、大邱、大田、軽北背の4地域には韓国里親会、釜山はセイブザチルドレン財団、ウルサンはグッドネイバーズ、濟州島は済州相談センターに委託運営することとした。20047月には、中央家庭委託支援センターを設置して、韓国里親会にその運営を委託した。

 

そして、2006 1 14日、児童福祉法施行規則において、家庭委託事業を活性化し、地域間連係体系を構築するため、家庭委託支援センターの設置根拠を整備した。中央家庭委託支援センターと地域家庭委託支援センターの役割を明確にし、業務推進の効率性を高めた。あわせて家庭委託支援センターの設置及び運営に必要となる費用の全部または一部を、国及び地方自治団体が補助できるようにし、家庭委託支援センターの運営の安定と、家庭委託事業の活性化を期した。

 

このような政府の努力に先立ち、各民間団体は、これまで家庭委託保護事業に多くの努力を傾けてきた。韓国福祉財団は、19903月ソウル、釜山、大田の3地域社会福祉団体に、家庭委託保護事業をモデル事業として選定し、実施した。1999年にKBS愛のリクエスト放送で委託家庭を紹介し、委託児童、委託里親と連係して、毎月20万ウォンの養育費を支援した。

また、韓国福祉財団は、家庭委託事業広報のための各種手引書と資料集を製作・配布し、委託里親教育教材と業務指針書を発刊した。家庭委託担当社会福祉司を対象とするワークショップを実施する等、サービスに対する専門性の向上についても、支援した。

 

そして、ボランティア組織として始められた韓国里親会は、19995月に社団法人に登録されたが、それ以前から毎年35~45名の子ども達を約30家庭に委託し、無料で養育していた。この他にも地域社会が要保護児童達に家庭を提供するため、2002年に国内最初の市民運動団体として、各地域団体が結成された。

 

 この文章の目的は、韓国の家庭委託保護事業の現状と問題点を把握することにより、今後の家庭委託保護事業を活性化するための具体的な諸課題を模索することである。このため、第一に、要保護児童の実態と国家の政策を探り、第二に、家庭委託保護事業の実態と問題点を把握して、第三に、これを土台として望ましい家庭委託保護事業の課題を探ろうとする。

 

2、要保護児童の実態と国家の政策

 

2000年以後に発生した保護児童数は90年代後半に比べ、約2倍に近い。要保護児童の発生類型は、1990年代には主に未婚の母の児童、飢餓、非行や家出、浮浪児であったが2000年代には貧困、失職、虐待による保護、児童と未婚の母児童がほとんど大部分を占めている。特に貧困、失職、虐待による発生類型が、新たに増加した。2000年に比べて 2005年には、これらによる保護児童の発生は 145%も増加している。(< 1>参照).

 

 


 

< 1>要保護児童発生数と保護類型

 (単位: 人, %)

   

発生類型

保護内容

 

遺棄

 

未婚母児童

非行、家

浮浪児,

貧困,失職,虐待等その

施設保護

家庭の保護

 

児童

 

障害児

 

未婚母

 

 

委託保護

 

入養

少年少女家長策定

1990

5,721

1,844

2,369

360

1,148

-

3,734

3,734

1,987

1,134

853

-

1995

4,576

1,227

1,285

149

1,915

-

2,819

2,819

977

505

472

780

2000

9,085

1,270

4,190

152

1,757

1,716

4,481

4,481

4,040

2,285

1,755

564

2001

10,586

717

4,897

98

728

4,146

4,774

4,671

41

62

4,938

3,090

1,848

874

2002

10,057

634

4,337

74

749

4,263

4,663

4,547

57

59

4,721

2,177

2,544

673

2003

10,222

628

4,457

79

595

4,463

4,824

4,747

42

35

4,898

2,392

2,506

500

2004

9,393

481

4,004

62

581

4,265

4,782

4,680

38

64

4,321

2,212

2,100

299

2005

9,420

429

2,638

63

1,413

4,877

4,818

4,769

48

1

4,602

2,322

1,873

407

資料:保健福祉部.各年度.保健福祉統計年譜年報

 

そして要保護児童には主に、児童施設保護、家庭委託保護、養子縁組保護が提供されることとなった、まず、要保護児童を養子にしたり家庭委託保護する率は増加し、2004年現在、家庭保護率は 46.0%に達している。けれども、施設保護率(50.9%)と比較すると、まだまでは施設保護率が家庭保護率より高いことが分かる。今後、家庭委託制度、永久保護計画等を通じた、代案的家庭保護に対する政策的支援が必要である。(二叔, 2006)

 

このような児童保護政策は、大部分児童福祉法、父子福祉法、齢幼児保育法よって整備されている。特に、児童福祉法に根拠をおいた児童保護サービスは、施設保護、家庭委託保護、少年少女家庭支援、グループホーム保護、退所児童自立定着金支援、欠食児棟給食支援、虐待児童保護により構成されている。彼らのサービス対象は、児童給食支援を除き、ほとんどの場合、国民基礎生活保障受給者恩恵(生活保護)として支援を受けることになる。

 

父子福祉法と齢幼児保育法による福祉サービスの場合、現金または現物給与の形で提供され、資産調査に基づく低所得層に限定している。そのほか、養子縁組特例法によって、養子縁組児童には、教育費及び養育費を支援している。最低生計費以下の家庭の児童には、国民基礎生活保障法による公共扶助が提供されている。また、刑法を根拠に各種の暴力から児童を保護するようにしている。

 

しかし、このような政策は、大きく見れば、児童福祉政策の一つの類型に過ぎない。要保護児童に対する、児童福祉政策分野における最近の重要な発展は、200471日に開催された、国政課題会議において発表された、貧困児童・青少年総合対策である。

.韓国社会で拡大する貧富格差と、それに伴う貧困の世襲問題が深刻だという認識において、チュジンデン総合対策は、消極的に最低限の生活を保障するレベルを越えて、積極的に公平な出発を保障する社会的投資を、低児童達を対象に実施するという内容を骨子としている。(李鵬週のほか,2006)

その具体的な推進計画は、6個の課題で提示されている。その内容はつぎのようなものである。すなわち、1)貧困児童の基本生活保障、2)貧困児童・青少年の健康な成長の保障、3)平等な教育・保育機会の保障及び学校適応の強化、4)貧困脱出を目指す道筋の提示、5)危機児童・青少年の保護の実質化、6)貧困児童・青少年への情報提供体系の構築などである。

 

これらを基本として、2006年度の国の児童福祉政策の骨格を全体的に見れば、次の <1>のようになる。

.具体的な政策目標を児童の権利拡大に置き、それに移行する課題として、1)事故に対する対応, 2)児童権利の画期的拡大、3)実質的伝達体系構築、 4)家庭中心の政策推進、5)地域社会児童福祉サービスの拡大においている。

このような5つの移行課題に対する各単位課題がある。このうち、家庭委託保護事業は 4)家庭中心の政策推進という移行課題の中の単位課題として、児童福祉政策の重要な部分を占めている.


< 1> 2006年度児童福祉政策の方向

政策目標 :児童の権利拡大

移行課題

 

単位課題

児童家庭内暴力に対する

根本的・効果的対応

 

@ 児童安全関連のインフラを構築し、安全な成長の支援

A 家庭内暴力予防推進

権利喪失分野の解消

児童権利の画期的拡大

 

@ 虐待児童の危険群別差等対応体系及び放任

  児童に対する早期発見・支援体系構築・運営

A 失踪児童捜索事業の戦略的・持続的展開

B 児童権利に対するモニタリング及び研究開発の体系構築

児童保護関連の実質的

伝達体系構築

 

@ 児童保護統合サービス体系の構築

A 児童権利向上及び児童安全環境造成体系の準備

家庭中心の児童保護

政策の推進

 

@ 国内養子縁組活性化及び養子縁組後管理強化

A 家庭委託事業の積極的な推進

B 家庭的な共同生活家庭運営の拡大

地域社会の児童福祉

サービスの拡大

 

@ 地域児童センター支援拡大及び運営の強化

A 児童給食の強化推進

B 児童福祉施設機能多様化推進

児童が地域社会の家庭で幸せに住み、

尊重され安全に成長する社会の実現

資料:保健福祉部(2006). [2006年度児童福祉事業案内]

 

3.家庭委託保護事業の現状と問題点

 

現在、家庭委託保護事業の対象児童は、親の疾病、家出、失職、収監、死亡その他の事由のために保護が必要と認められる児童、及び児童虐待のために隔離保護が必要な児童(優先的に選定)として18歳未満の児童(18才以上の場合にも、高等学校在学中である児童を含む)として決められている。

家庭委託の類型は、この他、祖父母による養育を「代理養育家庭委託」として行うもののほか、祖父母以外の親姻戚による養育を「親姻戚家庭委託」として呼び、その他の一般家庭による家庭委託を、「一般家庭委託」として分類している。

 

委託家庭世帯数と委託児童の実績について、全国的に調査した 2003年からの政府統計によれば、20035,313世帯、7,565人、 20047,169世帯10,198人、 20059,350世帯13,315人である。

全国的に13,000余名の児童達が委託家庭で保護されたが、90%強が、少年少女家長を代理養育または親姻戚家庭委託保護に転換した例であり、一般家庭委託保護対象は、2005802世帯1,042人と、全体要保護対象児童の7.8%に過ぎず、まだ名実ともの一般家庭委託保護事業と言うことはできない。

 

できれば、児童を血縁関係がある人が積極的に保護することが望ましいが、一般委託親(訳注:以下、「委託親」を「里親」と訳す)、特に児童関連専門職(看護、相談、福祉)経験がある専門性を身に付けた里親をたくさん発掘し、共同生活家庭で一定期間治療を行い、児童達を専門里親による家庭委託と連係して後遺症を持続的に管理してあげることが、被害児童を完全にリフレッシュさせることは、未だにできずにいる。

もちろん、一般里親の数は、血縁関系を重視する韓国社会の特性に起因する。しかし、児童は社会の重要な人的資産なので、社会が一緒に保護すべきものという認識を、深めなければならないので、積極的な広報とキャンペーンが必要である。

 

里親の選定基準は、2005年から、養子縁組児童選定基準に準ずることとした。すなわち、財産が十分で、宗教の自由を保障し、家庭が和睦し、里親の年齢も25才以上として調整する等、基準を少し厳格した。委託期間は、親父母(訳注:以下「親父母」を「実親」と訳す。)と里親が相談して決定するが、平均 2~3年間、里親家庭で生活することとした。

 

委託保護児童には、養育補助金及び国民基礎生活保障法(生活保護法)による現金給与が支給されている。福祉部は、委託保護決定児童に扶養能力がある扶養義務者が存在する場合にも、実質的な家族関係の断絶がある場合には、手当を支給している。特に、少年少女家長児童が委託保護児童になる場合、一人あたり30万ウォンの手当を支給している。委託児童を養育する家庭には、1名あたり地方自治団体によって異なるが、月7~13万ウォンの養育補助金を支給し、家のない委託児童保護家庭には3000~4000万ウォンの貸切資金を支援している。

また、児童の安全と委託家庭の心理的・経済的負担軽減のため、福祉部は、委託児童障害保険料を支援することとし、2006年には、まず16千名を対象として、一人あたり年間10万ウォンを支援し始めた。そして、TV、ラジオ等のマスコミを通した家庭委託事業広報のために、4億ウォンを復権基金で充当することとした。

 

障害保険料を国が支援し、里親の児童治療費があたって幸いだが、委託児童に事故が起こったとき、その責任の所在を誰に求めるか、また、実親が行方不明で所在地を探すことが出来ないとき、法的後見人はだれがなるか、規定がない。(新県棒, 2006).

 

一方、家庭委託の活性化とともに、共同生活家庭、グループホーム制度を実施している。グループホームは、成人保護者を含めて保護児童5人を標準とするが、7人以内で構成し、一般住宅地内で家庭のような雰囲気を作って、児童を保護することである。短期保護及び治療保護グループホームの入居期間は、1年が原則だが、1年単位で延長ができる。1997年からモデル事業を実施し、20032月に改正された児童福祉法にグループホームが施設の種類に追加されることとして、法的根拠が整備された。国庫支援グループホーム施設を、200432ケ所から、2005年には60ケ所に拡大した。事業施行初期には、住宅賃借料を支援したが、1999年以後から住宅賃借料を支援しておらず、グループホーム事業拡大の阻害要因となっている。(ゆげ鉱水, 2006)

 

4.家庭委託保護事業の対策

 

家庭委託保護とは、自分の家庭においては養育や施設保護が不可能な児童に、計画された期間、与えられる代理的な家庭的保護である。基本前提は、委託保護の水準が自身の家庭において養育を受ける水準以上でなければならないということである。また、いつか自身の家庭へ帰る子ども達に、家族の雰囲気と関係及び役割を体験させることで、その以後に変化した環境にも、よく適応できるようにすることが重要である。

 

このように、親から別れた児童のための望ましい代替的養育形態である家庭委託保護制度を活性化するためには、次のような対策を準備しなければならない.

 

第一: 一般里親の積極的な発掘とともに、児童配置時に、家庭委託保護を積極的に選択するべきである。これまでは、一時保護施設において障害または疾病の有無だけを評価した後、児童の意思と関係なく施設の収容能力によって児童養育施設に次ぐものとされていた。児童福祉法第10条、保護措置第4項によれば、知事,市場・軍需・区庁長(?)は、第1項第1(相談、指導)、二号(保護者または代理養育を望む縁故者による委託保護)または3(一般家庭委託保護)の保護措置が適合しない定規に対して、第1項第4(児童福祉施設入所)をする事ができる、と規定している。

すなわち、代理養育、親姻戚、一般家庭による委託保護を優先した後、これらに適合しないとき児童福祉施設に入所するように規定している。

法はすでに条約の原則を実現しようと早くから準備していたが、家庭委託事業の短い歴史と現場の公務員の無関心のために、法の執行がまともにできずにいると言える。今後、家庭らしい環境への積極的な配置を通して、家庭委託制度を活性化し、より進んで国内養子縁組につながるようにするであるべきである。

 

第二: 政府は、家庭委託児童を国民基礎生活保障の対象者に選定し、児童養育に対する経済的負担を委託家庭にかけないようにすること。政府は、離婚孤児などが一般児童養育施設に送られれば、国民基礎生活保障の対象者とされるのと同じように、虐待または貧困により親から家庭委託されるすべての場合に、受給権者に指定して、委託家庭の児童養育に対する経済的負担を減らさなければならない。

児童養育のための委託費用の負担は、一般家庭里親が増えるようにし、結局児童が家庭復帰が不可能な場合、児童と愛着関係が形成された里親によって養子縁組されれば、自動的に国内養子縁組活性化も図りうる。

 

第三: 家族統合目的の児童配置のため、定期的な検討を必ず行うようにしなければならない。児童は家庭復帰して、家族と再結合した方が良いか、またその時期はいつか、児童配置に対する定期的な検討を、必ず行うべきである。児童福祉法第10条第4項によれば、第1項第4号による施設保護時、施設長は児童の個別保護管理計画を立て、その過程に児童の保護者も参与させることができる、と規定している。

しかし、この条項は、家族統合のための具体的で積極的な手順と見るには、不十分である。アメリカの児童保護体系では、少年裁判所や家庭裁判所の判事によって、児童の配置に対する定期的な検討が行われている。

したがって、我が国でも、委託保護の期間をいつまでにすべきか、家庭委託支援センターがその評価をすべきなのか、そうでない場合には、アメリカの制度のように家庭裁判所の判決を通して行うべきなのか、今後の方向に対する確実な制度改善が必要である。

 

第四: 家庭委託支援センターの活動についての、積極的な広報が必要である。特に、個人的なレベルの委託保護依頼を防止するため、家庭委託支援センターの存在を積極的に周知し、個人レベルの委託保護より家庭委託支援センターの正式な手続きよって保護してもらうようにするべきである。

 

第五: 家庭委託支援センターに、事例管理(case management)を上手にできる専門家を、たくさん配置しなければならない。児童保護のための、より積極的で包括的な事例管理は、現在の家庭委託保護体系で推進する事ができる、最も積極的で実効性がある方法である。

事例管理は、保護を必要とする児童の状況についての正確な事情・結果を根拠に、総合的で長期的な保護計画を準備することから始まる。次に、児童が生活する委託家庭の根本的問題に近づき、児童の発達を支援できるよう、持続的な保護サービスの調整を含む。

また、事例管理中心の保護体系を構築する場合には、児童保護体系の高い接近症が要求される(?)。保護体系に対する容易な接近症は、危機状況の早期発見及び診断過程にも重要な意味を持つが、対象児童だけでなく、全体委託家庭家族状況に対する問題把握及び持続的な管理が容易でなければならないためである。(迫歳頃エ , 2005)

 

第六: 家庭委託保護事業の後見人に対する法体系を明確にする必要がある。委託児童に事故が起こったとき、責任を誰が負わなければならないか、法的後見人はだれがなるか、後見人規定についての法的根拠を必ず整備しなければならない。

 

第七: 委託児童と里親、実親に対する指導を、定期的にするべきである。彼らが必要とするサービスを持続的に提供するため、教育過程を運営しなければならない。特に里親に対する指導を徹底的にしなければならない。家庭委託保護事業の成功・失敗につながる決定的役割をする存在である。定期的な家庭訪問を通して、里親に対し、体系的な事後管理を実施し、委託の相談への満足度を高くし、里子によりよい環境を提供する。また、事後管理のためには、機関従事者に対する研修も徹底的に行わなければならない。第一線で勤める担当公務員も含み、研修を受ける等、組織的な体系を構築するべきである。

 

第八: 児童福祉関連市民団体は、市民運動的次元から家庭委託保護体系に対するモニタリングを活性化し、モニタリング結果を国の政策に反映できるようにしなければならない。そのためには、児童福祉関連市民団体間の有機的な協力ネットワークを構築し、地域住民の積極的参与を導き出さなければならない。あわせて、国際里子養育機構のような国際的な指導が必要である。

 

第九: 多様なマスコミを通して、家庭委託についての広報を強化しなければならない。現代社会において、マスコミが持つ影響力は非常に大きい。マスコミは現代社会で大衆の態度と価値を形成し、影響を及ぼす強力な媒体である。地域社会を対象にする教育・広報機能を進めるのに、非常に効果的である。したがって、伝達しようとする内容を最も效果的に伝達できるコンテンツを開発しなければならない。特に、家庭委託教育・広報キャンペーン・コンテンツの開発が必要である。あわせて、家庭委託保護事業に関する直接的なメッセージ伝達だけではなく、児童の権利に対する認識向上、家族機能の強化のような、間接的なメッセージ伝達についても、十分考慮しなければならない(迫歳頃エ , 2005)

 

5.結論

 

韓国では、最近出産率の下落によって出生数が持続的に減少している。このため、出産を奨励する等、出産率を向上するよう社会的関心を促すしかないが、これと共に、すでに出生した児童達に対する保護にも、全国家的関心を寄せるしかない。

 

家庭委託保護事業は、すでに韓国で 1,000年以上前から、国も宗教機関、民間で、実親が育てることが出来なかい場合、里親をおいて養育するようにした、代表的な児童保護事業である。そして、「児童は完全で調和した人格発達のために、家庭的環境と幸福、愛及び理解の雰囲気の中から成長しなければならないものと認める。」と規定している国連児童権利条約にあるように、実親によって養育を受けれない児童には、代理家庭として里親が必要なことは当然のことである。

 

もちろん、このような家庭委託保護事業は、普遍的児童福祉サービスを求める、基本哲学をもとに、すべての児童の健康で安全な成長を担保にされるべきである。虐待及び不適切な養育環境から起こる危険から児童を保護されるべきである。そのためには、政府単独でも、個別の家庭または個別団体だけでも、解決が難しい。したがって、児童を囲む実親、里親、民間団体、地域社会、政府がともに努力しなければ、成功を収めることができず、役割分担をきちんとしなければならない。

 

何よりも基本的で必須なものは、政府の財政的支援と法的整備がなくてはならないという点である。このため、国家行動計画(National Plan of Action) に、このような点を必ず反映しなければならないと強調し過ぎることはない。

 

 <参考文献>

キムグァンス(2006). "共同生活家庭の現状と課題". [2006年前局児童福祉担当公務員及び機関関係者研修会資料集].保健福祉部.

迫歳頃エ (2005). [OECD国家と韓国の児童保護体系比較研究].韓国保健社会研究員.

保健福祉部(2006). [2006年度児童福祉事業案内].

保健福祉部,各年度,保健福祉統計年報.

新県棒(2006). "家庭委託保護事業の現状と課題". [2006年家庭委託保護実務家庭教育資料集].韓国保健福祉人力開発院.

李鵬週エ (2006). "中長期児童政策部屋". [児童白書,中長期児童政策及び国家行動計画研究報告書].ソウル大社会福祉研究所.

二叔(2006). "児童白書:主要指標から探る我が国の児童現況". [児童白書,中長期児童政策及び国家行動計画研究報告書].ソウル大社会福祉研究所.

ホナムスン(2003). "効果的なサービス提供のための家庭委託支援センターの機能と役割". [家庭委託支援センター開所1周年記念学術セミナー資料集].

    ***************************

 

<仮訳者からの注記>

 これは、韓国里子養育父母協会Korean Foster Care Association, KFCA (韓国里親会)が開催した、「アジア子どもの権利と里親会議2006」(2006915()16()、韓国ソウル市)」における、発表論文を、パソコンの機械翻訳ソフトを使って日本語に翻訳したものである。

ホームページ上での発表については、発表者及び韓国里子養育父母協会の承諾を得ている。

 役者はプロの翻訳家ではなく、必ずしも正確でない部分があるが、日本語の文献が少ない分野であるため、あえて公開することとした。

 何かの資料としてお使いになる場合には、原文を参照されるようにしていただきたい。

韓国語原文を、日本のソークネクスト社の「本格翻訳韓国語」(1,980円)およびWindows XPにより機械翻訳した結果の日本語を、一部修正した。

韓国語原文の著作権は韓国里子養育父母協会、翻訳されたこの和文の著作権は翻訳者中兼正次にあるので、使用に当たってはそれぞれの承諾を得ていただきたい。 (中兼正次)